帰りの電車の中に密閉されていた身どもは、何とかして早くここから脱出できないものかともがいていた。
窓から見える夕空が今日も見事なものであったからだ。
鉄板の真ん中に開けられた透明なヴィジョンの奥の方では、まるで火の玉のように真っ赤になった太陽が、白に限りなく近い淡い桃色した薄衣のような雲の層にふんわりと包まれていて、少しずつそその中に火照った体をあずけていく様子が、ビルの合間からちらちらと見え隠れしながら中継されていた。
ううう・・・建物が邪魔だ。
もっと、もっと下なんだ。
これじゃ肝心なところがまったく見えないではないか・・・!
もっと、もっとよく見たい・・・!
まだ夕空が消えきってしまう前に降りるべき駅に着いたので、急いで外に出た。
でも、四方を見渡しても見えるのは高い高いビルばかり。
空のてっぺんは良く見えるが、端の方は四角い影に邪魔されて全然見えない。

まさにここはビルの海だと思った。
やかましく話し合っているスズメたちをいっぱい実らせた木のすぐ横を通って、どこかに隙間はないものかと海底の中を彷徨った。
でも、地平線が見える場所は結局見つけられなかった。
両手を思い切りはためかせたら、少しはこの体は宙に浮くだろうか。
そうすればあの低いビルが隠している向う側くらいなら見れるかもしれない。
本気でそう思った。
【今日のドルチェ】

C3(シーキューブ)のケーキ。
蓄音器みたいで、好きだなと思いました。
ここのドルチェはいつも、オシャレで遊び心がいっぱいでなおかつ美しいから好きです。








